2014年3月1日土曜日

後楽園開園記念日公演「しおさとまつり」

3月1日

毎年3月2日は、日本3名園の一つ・後楽園の開園記念日であり、この日は誰もが入園無料の日となっている。園内では、餅つき大会とかお神楽の公演とか様々なイベントが繰り広げられ、多くの人たちで賑わう。
この日、田賀屋狂言会傘下の玉野しおさい狂言会が、「しおさとまつり」と銘打って、習い覚えた古典狂言3題と新作狂言を披露する。最後は、田賀屋夙生師とその二男で狂言師・島田洋海氏による本格狂言も観られる。

以下、それらの番組を紹介しよう。
古典3題

1.「酢薑」(すはじかみ)
 あらすじ:都へ上っていく道中、摂津国の薑売と和泉国酢売が行き合う。街道に着くと酢売りが商売を始める。自分の許し無しに商売を始めるとは何事だと主張した薑売が、「からい」にかけて、「からく天皇の御時…」と薑の由来を語って聞かせる。酢売りは何という自慢話だと言って、今度は「推古天皇の御時…」と返しに「す」にかけて酢の由来を語って聞かせる。どっちも中々上手いことをいって勝負がつかず、、、、
中々味わい深い上品な狂言です。
 出 演:(酢売り)野間嶺子、(薑売り)田中宣史



2.「延命袋」(えんめいぶくろ)
 あらすじ:主人は、里帰りしている妻に、太郎冠者に離縁状を持たせる。主人から手紙が来たと喜んだ妻だったが、中身が離縁状と気づくや烈火のごとく太郎冠者を問い詰める。真相を知った妻は、主人の元へ駆け込み、「よくも里へ戻ったのをいいことに、太郎冠者に離縁状を持たせたな!」と怒るが、主人は「離縁した者がこの家に入るということがあるものか。」と強がる。ところが、、、、
 出 演:(主人)三宅一典 (太郎冠者)塩崎テツミ (妻)成山佳子


3.「神鳴」(かみなり)
 あらすじ:都で流行らぬヤブ医者が、東国へ下ろうとする。その途中、突然雷鳴が鳴り響き、目の前に神鳴りが落ちてきた。腰を強く打った神鳴は、この医者に針治療をしてもらい、又、雷鳴を鳴らせながら天へ帰っていくのだった。地震・神鳴・火事・親爺、怖いはずの代名詞の神鳴が舞台の上では、針に脅え、愛らしく見える、古典SF狂言である。
 出 演:(神鳴)小坂運子、(医師)斉藤章夫

 

新作狂言4.「しおさとの舟造り」(しおさとのふなづくり)
 あらすじ:玉の小さな塩田で作る塩は、売れなくなって思案に暮れた結果、漁師の仕事に職替えをしようことになる。いい魚場で魚を獲るためには、「大きな舟が要るぞ」ということから、大舟を造ることになった。
 出 演:(浜子頭)斉藤章夫 (浜子壱)成山佳子 (浜子弐)塩崎テツミ (浜子参)小坂運子 (漁師壱)田中宣史 (漁師弐)三宅一典 (舟大工)野間嶺子



番外狂言
 「伯母が酒」(おばがさけ)
 あらすじ:酒屋を営む伯母はしわい人で、まだ甥に酒を振舞ったことがない。ある日、甥は今度こそ酒にありつこうと伯母の家を訪ねるが、どう頼んでもまんまと断られる。甥は、ふと名案を思いつき、帰り際にこの辺りには恐ろしい鬼が出るので気を付けるようにと親切ごかしに脅かす。一旦帰る振りをした甥は鬼の面をかぶって引き返し、恐れおののく伯母を尻目に蔵に入り、存分に酒を飲むが、、、、
 出 演:(甥)田賀屋夙生 (伯母))島田洋海




 
田賀屋夙生氏プロフィール
笠岡市在住の狂言師。1980年、四世茂山千作氏(人間国宝)、十三世茂山千五郎氏に師事。1989年より「田賀屋狂言会」を主宰。岡山県芸術文化賞審査委員を務めるなど、岡山を中心に精力的に狂言普及活動を行い、海外でも高い評価を得ている。2009年より玉野しおさい狂言会を指導する。

島田洋海氏プロフィール
田賀屋夙生氏の次男。2002年、茂山千五郎に入門、師事する。2009年4月独立。現在、京都を中心に活動している。岡山周辺にも活動の場を拡げ、今後の活躍が期待されている。


 ‐ 狂言一口メモ ‐
能舞台の正面奥にある、松の絵が描かれた羽目板のことを鏡板(かがみいた)と言います。舞台上での音や声を響かせるための反響板としての役目があります。又、描かれた松は老松(おいまつ)と呼ばれるもので、後楽園能舞台の松の絵は、倉敷出身の池田遙邨(いけだようそん)画伯の作です。「しおさとまつり」紹介チラシの写真が後楽園能舞台の鏡板です。
玉野しおさい狂言会では、昨年、持ち運び可能なように布製の鏡板(
上の写真にある鏡板)を作りました。能舞台のない玉野でも手軽に能舞台の雰囲気を味わうことが出来るようになりました。この鏡板の松は、昭和の中頃まで玉野市築港の老松通りに立っていた老松をモチーフとしており、市民有志に参加を呼びかけたワークショップで、松の葉を刺繍するなどして仕上げました。


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