2010年10月4日月曜日

サッキータイム ~社会保険を考える(1)~

10月4日(月)―社会保険とは何だろう?

今回から暫く、健康で文化的な社会生活を送ってゆくために、非常に重要な制度である社会保険について考えてみたい。

社会保険とは、端的に言うと相互扶助の精神を社会的に制度化したものである。
社会保障という言葉があるが、これは憲法の「全ての国民は文化的な生活を営むことができる」ということを実現するための制度である。社会保障は、公的扶助(生活保護、災害扶助等)、社会保険(医療保険、年金保険、雇用保険、労災保険、介護保険等)、公衆衛生(結核、伝染病等の予防対策等)、社会福祉(児童・老人・障害者福祉等)に分類できるが、この中核をなすのが社会保険である。
つまり、社会保険とは、保険という技術を利用して、疾病、負傷、出産、失業、生涯、老齢、脂肪、要介護等といった保険事故が生じたとき、該当する人やその家族に給付を行ない、所得や医療を保障する制度である。
社会保険を保険の種類から大きく分類すると、
①医療保険(健康保険、国民健康保険、高齢者医療、船員保険、各種共済組合等)、②年金保険(厚生年金保険、国民年金、各種共済組合等)、③雇用保険(雇用)、④労災保険(労災、船員)、⑤介護保険(介護)の5つに分類できる。

さてここで、社会保険制度の動向と今後の課題について考える。
先ず、医療保険制度である。
我が国の医療制度は、全国民が健康保険や国民健康保険と言う公的保険制度に加入し、保険証で誰もが安心して医療を受けることができる「国民皆保険制度」を採用している。この仕組は、世界最高水準の平均寿命、高い保健医療水準の実現にも貢献し、国際的にも高い評価を受けている。
一方、医療費の伸びは、経済(国民所得)を上回るスピードで伸びているのだ。医療保険制度を将来に亘って安定的で持続可能なものとするためには、医療の質を確保すると同時に、制度全般にわたる構造改革が求められている。
こうした状況を踏まえ、社会保障審議会医療保険部会などに於いて、平成18年度医療制度構造改革が議論されてきた。平成18年6月の健康保険法改正では、以下のような基本方針のもと、制度の見直しが行われた。
①予防重視と医療の質の向上、効率化のための新たな取組・・・生活習慣病を中心とした疾病予防を重視し、医療計画の見直しによる総治療期間(在院日数)の短縮等の医療体制確立。⇒国と都道府県の5ヶ年計画を策定し、40歳以上を対象とした健康診断・保健指導の実施を義務付けた。
②医療費適正化に向けた総合的な対策の推進・・・医療費適正化計画に基づき、中長期的な医療費適正化を進めるとともに、公的保険給付の内容・範囲の見直し等の短期的方策を組み合わせた医療費の適正化。
③都道府県単位を軸とする医療保険者の再編統合・・・保険財政運営の適正化、地域の医療費水準に見合った保険料水準の設定のため、保険者の都道府県単位を軸とした再編・統合を推進し、保険財政の安定化、医療費適正化に資する保険者機能を強化。⇒健保の組合員以外の被保険者を管掌する全国健康保険協会を設立し、都道府県ごとに保険料を設定するなどの措置を取った。
④新たな高齢者医療制度・・・高齢者の心身の特性・生活実態等を踏まえ、新たな高齢者医療制度を創設する。つまり、75歳以上の後期高齢者の医療のあり方を考えた独立保険を創設し、65~74歳の前期高齢者については予防を重視して国保・被用者保険といった従来の制度に加入しつつ、負担の不均衡を調整する新たな財政調整制度を創設する。⇒従来の老人保健制度に代わり、平成20年4月に創設。保険料徴収は市町村が行い、財政運営は都道府県単位で全市町村が加入する広域連合が実施する。ただ、この制度は最初から老人を差別するものだとして評判が悪く、現在厚労省で再設計が行われている。

次に年金制度を巡る動向と今後の課題について考える。
サッキー自身も既に年金生活を送っているわけだが、公的年金制度は、定年を迎え職を失った高齢者、働き手を失った遺族、怪我や病気で仕事ができなくなった障害者等にとって、その生活を支えるためになくてはならない重要な制度である。公的年金受給者は、平成19年度末に約5500万人で前年比230万人増であり、年金総額は、47.7兆円となっている。
老後の生活設計の調査でも、国民の7割が公的年金を基本と考えており、高齢世帯の所得状況も年金の占める割合は7割となっており、公的年金制度はまさしく高齢者の生活の基本なのである。
しかし、少子高齢化の進行により、制度の持続性に不安が生じているのである。
公的年金制度は、「現役世代」が「年金受給世代」を支える仕組み(世代間扶養)であり、人口構造の高齢化の進行により、現役世代の負担が重くなっていくことは避けられない。このような状況下で年金給付と保険料負担のバランスをどう図っていくかということが重要な課題である。

平成16年の制度改正
従来の制度を続けていたとすると、保険料だけで従来の年金額を賄うには約倍額の保険料となるし、保険料をそのままとしたら高齢者がモラエル年金額を3~4割も減額しなければならない状況だった。これは両方共受け入れられないことであった。
そこで、①社会経済と調和した持続可能な制度の構築と制度に対する信頼の確保、②多様な生き方、働き方に対応した制度の導入を基本方針とした改革が行われた。
その主な内容は、
①に対しては、基礎年金国庫負担割合の1/2への引き上げ、財政検証の実施(少なくとも5年ごとに概ね100年の期間に亘る年金財政の検証)、保険料水準固定方式とマクロ経済スライドによる給付の自動調整の導入等。
②に対しては、在職老齢年金制度の見直し、次世代育成支援措置の拡充(育児期間中の保険料免除措置の拡充)、厚生年金の標準報酬分割制度の導入(第3号被保険者期間&離婚時の厚生年金の分割)等である。

今後の課題
今後、公的年金制度の一元化と言う問題がある。被用者年金制度として、厚生年金の他、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私立学校教職員共済の3制度がある。3制度加入者は全体の13%しかなく、財政面で厳しい状況になることが予想されたため、昭和59年に、平成7年を目処に公的年金一元化の目標が示された。又、昭和61年に、全国民に共通した基礎年金が導入された。平成16年の法改正では、「公的年金制度の一元化を展望し、体系のあり方を検討する」との規程が設けられた。
平成18年に開かれた「社会保障のあり方に関する懇談会」の報告書では、被用者年金制度の一元化から始めるべきとしている。又、国民年金と被用者年金の一元化についても言及している。

本日ここまで。

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