2011年12月29日木曜日

【南北楽観主義-せとうち-】を支えた人たちの声

12月29日

今年の芸フェスの特筆すべきは、何といっても9月に開催した【南北楽観主義-せとうち-】であろう。
そもそもこの芸フェス(玉野みなと芸術フェスタ)は、宇野港を芸術港として全国に情報発信したいとの思いで2003年にスタートした、宇野港界隈で開催される芸術の祭典であった。
今年9年目を迎えた芸フェスは、年の初めに、宇野だからできるもの、宇野でなければ出来ないものと言う考えから、南北楽観主義というコンセプトが生まれた。
そのコンセプトを中心として、今回のイベントを支えた、ディレクションを担当したSHIGERUさん、芸フェスのナビゲーターである清水直人さん、そしてこの展覧会に参加してくれた作家さんの声を紹介したい。来年以降開催するときの貴重な意見として、できるだけ採り上げることとしたい。

(ディレクター/SHIGERUさんの声)
【南北楽観主義-せとうち-】のディレクションを経験して

今回の展覧会のディレクションをさせていただいて、私個人としては、様々なことを経験し、多くのことを学ぶことができました。今回、私がディレクションを行う上で柱として考えたことは、参加していただいた作家の方々に存分に表現できるような環境を運営サイドがしっかり作り上げ、フォローしてゆくことでした。しかし、こちらの不手際もあって、一人の作家の方からあることでクレームが出ました。会期が終わるまでにそのクレームに素早く対処できたことは幸いでした。
結果として、反省すべき点は多々あります。確かに、結果は重要ですが、それ以上に自分の与えられた仕事に対して自分が真剣且つ真摯に仕事をしたかということの方が、より重要だと考えています。結果は時が経てば忘れてしまいます。しかし、如何に自分が努力したかというプロセスや経験は、ずっと記憶に残るものです。
この展覧会が終わった時に、心から充実感を味わうことができました。又、高松側の方々とも心を割って話が出来る位に仲良くなれました。このことは、これからの私の人生において本当に大きな財産となりましたし、大変ありがたいことと深く感謝いたしております。
今後、「南北楽観主義」を次につなげることが、今回ディレクションをさせていただいた私の責任なのではないかと思っております。
最後に、この「南北楽観主義-せとうち-」に様々な形でご協力していただいた多くの方々に、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

(ナビゲーター/清水直人氏の声)
【南北楽観主義-せとうち-】開催の意義と今後の課題

宇野・高松アーティスト交流企画展【南北楽観主義-せとうち-】は、これまでの玉野市での芸術文化活動の方向性に新たな一石を投じたと言っても過言ではない。それは、「南」を視野に入れた展開であったという点によるものである。
岡山県の文化的中心地は、県庁所在地たる岡山市であることは論を待たない。美術館、博物館などの文化施設を始め、ギャラリースペースの数も圧倒的で、岡山市以外の地域での文化的活動についても、主な情報発信地を岡山市に定めてきた。芸術文化活動を進めるための環境は言うに及ばず、幅広い層に対して最も効率よく情報を発信できるのが岡山市であるということからである。
今回の【南北楽観主義展-せとうち-】は、視野的には岡山市も含んではいるが、主として「南」つまり「高松」を視野に含んで展開した。岡山市を中心とする場合、玉野市は県南端であり遠方となってしまう。しかし、「せとうち」を中心地として考えたとき、玉野市宇野の立地は、逆に「中心」となる。岡山県と香川県を一つの「せとうち」として考えたとき、本州と四国を結ぶ本州側の交通の拠点は、宇野と児島の2カ所である。中でも直島への玄関口にもなっている宇野は、「せとうち」において最も重要な拠点となる。
つまり、宇野は、「南を視野に入れる」のではなく、「南を視野に入れなければならない」と考えるべきなのである。これは、玉野市宇野の立地や現状に課せられた重要な役割であり、この活動は岡山県全体に関わりが広がってくるということができる。
「玉野みなと芸術フェスタ」主催の下に開催された今回の【南北楽観主義展-せとうち-】は、岡山・香川両県の作家の交流展に加え、両地域の会場を巡るアートクルーズ、「せとうちを隔てた夫々の地域」というテーマで議論した車座談義など、両地域のまちづくり活動やアート活動の現状を市民団体で互いに理解し合う初めての機会となった。
これらの活動を通じて、これまで交流のなかった宇野~高松間に文化的情報拠点の確認、芸術・芸能活動のネットワークの形成などに対して基盤構築が行われ、互いの今後の活動に重要なエポックとなったことは間違いない。今回の【南北楽観主義-せとうち-】は、高松側のNPO団体や人々と交流する機会を作り、新たな文化的コミュニティを形成し、「せとうち」という巨視的且つ包括的な視点を共有し、共同で活動を行っていく可能性を高める絶好の機会となった。
これまで「せとうち」の海によって分断されてきた文化的活動を、今回イベントを契機に「せとうち」と言う地域(海域)で結びつけることができたのである。さらに今後、これを継続・発展させることが、玉野みなと芸術フェスタに課せられた大きな命題であり、宇野の発展を支えるキーワードになりうるものと考える。

(玉野市文化会館BAUHAUSに展示された作家/勝木繁昌氏の声)
【南北楽観主義】に参加しての反省点

新しい作家、宇野の人と交流ができたこと。芸術を通じた、地域貢献が出来る可能性が見えたこと。良い作家との出会いは、自分を刺激します。海が近いのが、気持ちがよい。
宇野側の細やかなサポートが嬉しかったです。
搬入、搬出の応援が大変助かりました。食事券もありがたかった。

1. 展覧会の始め、終わりの日時等日程合わせ。
2. メディアへのアピール不足。新聞、地域新聞、テレビ、ラジオ、情報誌、美術手帖、美術館、画廊関係など。直接出向くぐらいでないと、簡単に載せてもくれません。
3. ホームページの充実。展覧会の会場風景など載せたり、イベントの告知。今後、一番大切なポイントです。専門にやる人が必要です。
4. 作家の受け入れる体勢。想定内で考えてほしい。宿泊できるスペースの確保。お風呂、布団、トイレ。ホームスティスタイルでも、よかったのでは。
5. 高松側と宇野側で同じぐらいの対応ができていない事は問題です。まず、会場は対応できていません。
6. 展覧会は、最低2週間はあった方がよいと思います。いっそ、レジデンスにして公開制作してはどうでしょうか?
7. 今後も、バウハウスがメイン会場になるならば、搬入口を大きくする必要があると思います。空間がもったいないです。
8.スタンプラリーや宇野の街を歩いてもらう様な工夫がなかった。街がまだ、アート展開催を知らない人が多いと思いました。街全体を巻き込むぐらいでないと、街は応援も協賛もしてくれないと思う。
9.運営は大変だと思いますが、作家に謝礼が出るような展覧会システムを構築して頂きたいです。 (作家ももっと、プロ意識を持つべきだと思います。)

2012の企画 
宇野でアートデート 宇野でアートピクニック 宇野でアートジェネレーションみたいなテーマがよいと思います。テーマ 「同世代」に生きる。
バーチャルではない、心のアートコミュケーションが求められています。
Twitter、Facebook を始めとしたデジタル上のソーシャルネットワークが拡大する時代が到来し、その反動としてリアルな人間関係やコミュニケーションが希薄になりつつあることが気になっております。

レンタサイクルで宇野をアート探険させながら、お店に買物したり、食べたりして、アートを観賞したりして楽しむ。スタンプ全部押せたら、カンバッチ贈呈、メバルストラップ進呈など。
子供も参加できるような、展覧会が宇野には必要です。子供が参加すると親も参加します。ワークショップも組み込ませるできます。外国では、小中学校で1日先生になったりします。

今回、宇野港周辺を彼女とぐるぐると歩き回ったけど、けっこう楽しかったから・・・。宇野の良さを引き立てるプロジェクト!

ののちゃんの記念館ともリンクしたらいいと思います。東江戸川3丁目です。(笑)

ズバリ、公開制作、アーティストインレジデンスです。

高松sottoprodottoに展示された作家/加藤直樹氏の声)
【南北楽観主義】の反省点

・「芸術フェスタ」としての魅力づけ
今回の交流展は継続事業ということですので、来年以降の面白さで活気づくか尻すぼみかがはっきりするんじゃないでしょうか。率直に言うと、今回は失敗だと思います。その根幹は芸術フェスタ自体の魅力が薄いからです。勝木さんとのメールのやり取りで「同ジャンルのVS展」はどうかという意見をいただきました。一つの例ではありますが、同世代又は異世代の価値観自体をぶつけあうような企画は、とても刺激的で作家自身にとってもストレスのかかる状態に身を置くことで、さらにいいものが生み出せるんじゃないでしょうか。「南北」という言葉をもっと多角的に捉えた提案が次回には必要だと感じました。 

・広報の手段
自分の個展をやるときにはできるだけギャラリーにプレスリリースをお願いします。してくれない場合は自分で作ります。そして雑誌(全国誌・地方紙)、新聞、テレビ、ラジオ、ギャラリー情報系webにばらまきます。僕のようなマニアックなものを作っている場合、DMを見ただけでは押しが弱いようで、会場に足を運ぶのを躊躇されることが多いです。そのどっちつかずな状態を前に進めるのが各種メディアだと思っています。一般の人にとって謎に満ちたアートの世界に一歩足を踏み入れてもらおうとするには、メディアをうまく活用して情報や素性をオープンにするべきだと思います。

・作品を見せる?販売する?
各会場ごとに作品を売っているものの、魅せる要素と販売する要素がごちゃまぜでそのどちらもの足を引っ張った展示になってしまったんじゃないかと思います。駅東創庫の凡土さん、千葉さんの展示はうまかったですね。南北楽観主義としてどうありたいか、何を伝えたいかで作品や展示の構成が変わってくる筈です。その辺りも要綱に盛り込んでもらえたら、クルーズしてても視点の定まった見方ができて面白いんじゃないでしょうか。因みにソトプロでは、3人が「せとうち」をテーマに新作を作りました(詳細は清水くんと森さんにまる投げしますが)。僕たちが感じたせとうちは有機的でとても儚いものだったように思います。幾度も重ねた話し合いで、各作家の主観を問いただすような議論ができたのはとても有意義で、自分の作品を客観的に見つめ直せました。その時にも「売ってもいいし、売らなくてもいい」という話だったので、その辺りのバランスが難しかったです。

・ハード、ソフト両面での交流を
ここでいうハードとは、「芸術フェスタ実行委員会」と各ギャラリー、それを取り巻く環境、ソフトとは、作家や関係者を指しています。今回は、荒天で搬入も何とか、初日イベントは全てキャンセルという稀な事態でしたが、それだけに様々分かったことがありました(搬入と初日のことに関してのあれこれは清水くん森さん、笹川さんにまる投げします)。交流展とは、結局人と人をいかに結び付けていくかだと思います。高松の作家さんが関わった宇野側の人はおそらく数人、宇野の作家さんが関わった高松側の人もおそらく数人じゃないでしょうか。関わった数人によって町の印象すら変わってしまうというのはおかしな話です。その交流の幅をもっと広げられるようなシステム作りはできないものでしょうか。小さくまとまらず、市自体の交流に発展するものになればと思います。

長くなりましたが、以上です。
あくまで個人的な意見ですので、拾えるところをピックアップしてもらえたらと思います。

僕もみんなと「膝を交えて」話がしたかったです。
またの機会にお会いしましょう。

(サンコアに展示された作家/あきやましんご氏の声)
アンケートへの回答

■今回のイベントに参加して、良かった点、嬉しいと思った点は何ですか?
 ⇒岡山の作家さんや玉野みなと芸術フェスタ実行委員会の皆様、関係者の皆様と出会うことができ、大変うれしく思っています。宇野という場所も少し垣間見れて,また普段に行きたい場所になりました。サンコアの大前さんに出会えることもでき、ありがとうございました。
■今回のイベントに参加して、改善すべき点、要望したい点を教えてください。
 ⇒一番感じたのは、期間がもう少し長かった方が良かったのかと思います。
■来年の「芸術フェスタ2012」には、どんな企画があったらいいと思われますか?
 ⇒毎年ではなくてもこの南北楽観主義を定期的に続けていってほしいと思います。又、岡山と香川だけではなく、毎年近県を1つずつ増やしいていっても面白いかと。
■その他、今後の「イベント」及び「芸術フェスタ」に対する、あなたのご意見を自由にお書き下さい。
 ⇒今回のイベントにしっかり参加できていないのが、大変申し訳なく思っています。もっと、「南北楽観主義」の空気感を味わいたかったです。


本当に有難い声を数多く頂きました。他にもたくさんの声を頂いていますが、紙面の都合で割愛させて頂きます。皆さんありがとうございました。来年も宜しくお願いします。

展示作品のキャプションを作るSHIGERUさん(左)と清水さん(右)

駅東創庫のGallery MINATO に搬入作業をする作家たち(手前が凡土さんで右端が千葉さん、因みに中奥は駅東創庫代表の高嶋幸市さん、左端はSHIGERUさんこと山田茂さん)

玉野市文化会館BAUHAUSに搬入作業をする作家たち

sottoprodotto に展示された加藤直樹作品の鑑賞者と説明する加藤さん(手前)

アートクルーズで宇野港に上陸した参加者たち(旗を持って先導するのはサッキー、左端は駅東創庫で活動する作家/佐藤史仁さん)

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