6月11日(木)
船旅は楽しい。瀬戸内の多島美を船に乗り、爽やかな潮風を受けて旅に出るのは、心浮き立つものがある。オリーブとジャスミンの香り漂う小豆島、現代アートで世界的に有名な直島など、思っただけでもぞくぞくする。四国に渡れば、「坊ちゃん」の道後温泉でゆったりのんびり、船旅は楽しいものだ。
船は、ロマンチックで郷愁を誘うもの。サッキーは、そんな船を造ってみたいと、大学も造船学科を専攻し、岡山県玉野市にある三井造船に入社、船と言う「ものづくり」に長年携わってきた。造ってきた船は、原油を運ぶ「油送船(タンカー)」、鉄鉱石を運ぶ「鉱石運搬船(オアキャリア)」、穀物を運ぶ「バラ積み貨物船(バルクキャリア)」、貨物用コンテナを運ぶ「コンテナ船」、乗用車などを運ぶ「自動車運搬船(カーキャリア)」など、いわゆる貨物船だ。
今回のノートでは、「船」というものの製造プロセスを紹介して、ものづくりというものの面白さや大変さ、いい船(もの)を造るためにはその道のプロと呼ばれるような多くのいい人材が必要であること、又そういった人たちの連携と和がとても大切であることを感じてもらいたいと思う。
船は大きさや種類にもよるが、5万トンクラスの貨物船だと20億円超、客船や軍艦等は数百億円もする高価な製品だ。だから、船主も造船所も最初の計画段階に相当の時間をかけて、船の仕様を検討する。造る船の目的(何のための船)、航路(どこからどこへ航行する)、船籍(どこの国の船)、船級協会(船の安全を保証する保険協会)、主要目(長さ・幅・深さ、貨物容積、積載重量、船速)、乗員数、自動化率、燃費、乗り心地等に応じて最適な船の形状や配置、構造計算や板厚の決定、メインエンジンや各種機器、プロペラや舵の大きさ、居室の内装計画、最適な電気・通信装置、塗装要領、建造方針等、検討することは多岐に亘り、多くのマンパワーが投入される。
計画が合意され受注に漕ぎつけると、愈々本格的な設計が始まる。製造に長期を要するメインエンジン、発電機、プロペラ、アンカーチェーンなどを発注し、船体を構成する鉄板の仕様と納期の設定を行う。船は、造船所の持つクレーン能力に応じた100~200トンに分割されたブロックというかたまりを、船台上(又は建造ドック)で積み木細工のように積み上げて造る。船台上で船体が完成すると、華やかな紙吹雪とともに海上に滑り出す進水式だ。岸壁では、船を動かすための各種装置やパイプを取り付け、調整する艤装工事が行われる。最後に海上公試運転を行い、船主に引き渡される。起工~引渡しに約半年弱、受注からだとゆうに1年はかかる長丁場である。
船を造るには、多くの人々の知識と経験、知恵が投入される。船を設計する人、材料を調達する人、船の施工計画を立てる人、鉄板を切断し曲げる人、鉄板と鉄板を溶接する人、進水準備をする人、パイプを繋ぐ人、エンジンを組立て取り付ける人、テストをして記録を取る人、品質を確認する人、塗装する人、等々延べ数万人の人々が関わりを持つ壮大なプロジェクトである。
そこでは、我が侭な行動は許されない。連携しうまくかみ合ったとき初めて、船主に気に入ってもらえる、いい品質の船(もの)が安いコストで出来上がる。
ものづくりとは無縁の病院でも、診療報酬システムとかオーダリングシステムの構築と言う、目に見えにくいものづくりを進めることがある。その過程では、予想される混乱、気付いた点の的確なアドバイス、それを受け入れる謙虚さなど、全体として連携と調和が必要なことはいうまでもない。
ものづくりには、人と人との和(輪)と連携が大切であることは、どの世界も同じことだ。
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