2009年2月5日木曜日

サッキータイム ~縄柱に火を点けることで・・・~

2003年12月

世界的な環境芸術・彫刻家/八木マリヨ氏の創る巨大縄アートに、最後のセレモニーで火を点けることによって、Tシャツに込めた皆の願いを天に届けるという神聖なイベントに対して、異を唱える人が居た。数は少ないのだけど、そういう人の声というのは相当大きいため、数多く聞こえる。
それらの声に対して、八木マリヨ氏の指導をいただきながら、下記のような回答をすることにした。読者の皆さんはどう考えるのだろうか?

今回(2003年度)の芸術フェスタの総合プロデューサーである八木マリヨ氏は、1991年から地球環境の生存と人類の平和を推進するグローバルフォーラム(ニューヨーク本部)芸術部門の会員として、アースサミット、世界の芸術家会議&展覧会で、ネットワークをつくる活動をしてこられた。
又、北海道、神戸、イタリア、ドイツ、島根、エストニア、鳥取、京都などで市民参加の縄バイタル・リンクアートプロジェクトを展開し、「社会芸術」(パブリック・アート)を進めておられる。彼女が提案するパブリック・アートは、市民の誰もが集い利用できるスペースに「心をふくよかに満たし、ときめきをかもしだす環境をつくる」環境芸術である。地域の独自性を引きだし、個性をもたらし、地域の新しい顔として、市民文化を活性化する役割をもつ、と主張しておられる。
自然・歴史・地上産業・市民の暮らし・祭りや行事と、環境芸術が一体となることで、より魅力ある街や地域を創り、美しい誇りの持てるコミュニティやふるさとを育成する手助けをするのが、彼女のライフワークである。今回の「玉野みなと芸術フェスタ」に対しても、そのような思いを込めて取り組んでおられる。

宇野港の象徴、それは「船」。玉野市は、全国的にも有名な「造船の町」でもある。船と縄。船には係留のための舫い、ロープ、綱。船を推進させるためのプロペラ。その形状は螺旋。縄の螺旋とプロペラの螺旋。縄は、船そのものを象徴する。
巨大縄柱は、玉野の命であり柱でもある「海、港、船」を象徴するモニュメントとなる。であるからこそ、「玉野みなと芸術フェスタ」の初回イベントに相応しいと考えた。

モニュメントは、玉野市民や岡山県民、或いは全国の多くの人達が、愛用し汗の染み付いた着古しの木綿のTシャツが素材である。Tシャツには、宇野港への思いや将来の夢、自分の願いを書いていただいた。愛用のTシャツは、人々の最も肌身に近い日常着。それは人の分身、あなた自身を表すものである。

一人では決して創ることのできない巨大縄柱マリンモニュメント。多くの人達の協働で創りあげた、人々の祈りのこもった縄柱。だからこそ縄柱は粗末に扱うことはできないと考える。人々の祈りを天の神々に届ける儀式。それは、この縄柱を太陽の火で点火し、完全に燃焼させる「炎のアートセレモニー」でなければならないと信じている。これこそが、この縄アートのフィナーレを飾るクライマックスであり、真髄であるとも思っている。

玉野みなと芸術フェスタ実行委員会は、以上の考えに基づき、今回制作する「巨大縄柱マリンモニュメント」を最後のセレモニーにおいて、炎のアートセレモニーとすることを決意した。  以上


以下、何故「縄柱マリンモニュメント」を燃やすのか?についての想定問答集だ。

FAQ(良くある質問)

Q1;縄柱モニュメントを燃やして、ダイオキシンなどで大気汚染を起こすことは無いのか。
A1;天然素材に限るので問題はない。綿100%限定とし、新素材は除いている。

Q2;3R(リユース、リデュース、リサイクル)が叫ばれる現代において、燃やすなどと勿体ないことをすべきではない。
A2;着古して型崩れした物や汗の染み付いたようなTシャツを出していただく。阪神大震災のとき、八木さんのプロジェクトとは別に、救援として全国から神戸に古着が届いたが、着るには忍びないようなものまでたくさん届き、実際は倉庫に山積みされ、かびたりし困って秘密に焼却されたとのことがあった。
ドイツでも、赤十字に集まった物の中から難民の皆さんが引き取られても残る物がかなりあり、特に古Tシャツは汗が染み込んだあとという印象なので、余っていた。セーターやズボンの古着とは違うのである。通常は、木綿のシャツは、ウエスとして工業用に利用される。又、細かく裁断され車の椅子シートなどの心材に利用される。

Q3;燃やしてしまったら、何も残らないではないか。
A3;心、目に見えないものの計り知れない大切なものがあることを知ること、聞こえないもの見えないものを感じ、心に染み入る体験のために利用することも大きなリユースである。心に残る思い出も大きな財産。燃えた後の灰は、植木土の肥料としてリユースすることにしている。

Q4;火(燃やすこと)の意義は何だ。
A4;世界各地にある文化や伝統的行事にある、クリスマスツリーを焼く祭典や正月注連縄飾りを燃やすどんと焼きのように、感謝や思いや願いを天に届ける、見えない偉大な宇宙や神聖な気持ちを養うものだと考える。何か新しいことを始めるとき、古いものを浄化し、新規にスタートするとき、昇天するために火の祭典をしてきた世界旧知の文化行事と同等の行事である。
那智の火祭り、野沢の道祖神火祭り、京都の大文字焼きなど、日本にも伝統ある火祭りの行事がある。火はそれほど神聖な意味を持つものなのである。

Q5;言われることは分かるが、環境問題が厳しい現状において、法律に触れるようなことは無いのか。又、煙や飛灰が散って、市民に迷惑を与えるのではないか。
A5;国の法律として「廃棄物処理法」、県条例として「環境への負荷の低減に関する条例」があるが、モニュメントは廃棄物に該当しない。燃やす量からして環境負荷に圧迫を与えるものではない。玉野市が自粛を要請している野焼きにも当たらない。
煙は殆ど出ない。強風があれば飛灰は散るだろうが、スペイン村用地を借用して実施するので、民家まで影響を及ぼすことはないと考えている。宇野駅及び近所の会社などには、事前にお断りを申し上げておく。
Q6;海岸付近で10mもの巨大なモニュメントを燃やすと、航行する船から火災信号を送るなど誤報の元となるので、燃やすのであれば夜間は避けるべきではないか。又、類焼の問題や参加者・見物人などの安全対策はどうなっているのか。
A6;玉野市消防本部に事情を説明しており、誤報への対処をお願いしているし、短時間で燃えてしまうので、大きな影響は無いと考えている。
又、当日も出動してもらい、消しながら燃やす、燃やしながら消すなどの操作を行い、安全に燃やすことを計画している。縄柱の周囲に縄で立ち入り禁止措置を行うとともに、警備を兼ねた担当者を配置する。点火は、総合プロデューサー、実行委員長のほか、市民の限られた代表者のみとし、事前に十分な安全教育を行う。

Q7;市民の中に反対意見があるのに、敢えて強行する理由は何だ。
A7;逆に、芸術性と火祭りの行事を優先して、火をつけるべきだと主張する人も大勢いる。何をするにしても反対意見が出ることは避けられないと思う。今回のイベントは、野焼きなどとは全く違う次元のものである。環境芸術家である八木マリヨ氏の芸術の一環として、火をつけることとしている。今回のモニュメントは、永久に残せるような素材ではないことを考えると、いつかは処分が必要となる。そのとき、廃棄物と一緒に燃やすようになったら、皆さんの願いがゴミと一緒になってしまう。実行委員会としては、そのようなことになってしまうのは忍びないと考えている。是非とも皆さん方がTシャツに書かれた願いを、天に届けるという意味を込めた儀式を行うことに、ご理解ご協力を賜りたいと心から願っている。

上の写真は、2004/2/8(日)、まいぎりで熾した日で縄柱に点火する、八木マリヨ氏と12名の玉野市代表者。下の写真は、燃えさかる縄柱の炎に合わせて幻想的な音色を響かせる由加太鼓の演奏。この光景を観たら、厳かな火の美しさに圧倒されない者はいない。きっとそう思える時間であった。八木マリヨさんが火の芸術に拘った意味がよく分かった。
この日、昼間から小雪がちらつく寒い日だったが約800名の観客が集まり、静寂な暗闇の中赤く揺らぐ炎に、祈りを捧げる姿が数多くあった。

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