2009年2月25日水曜日

サッキータイム ~私のプロジェクトⅩ-4~

第4回 プロジェクトの進め方・基本コンセプト~MES玉野にて

解決すべき検討課題は余りにも多岐に渡り、複雑な関係にあった。正に難問山積と言う状態だった。当時、三井造船の仕事の進め方は、どちらかと言うと、演繹法的手法をとっていた。結果を予想して、先ずやってみる。そこでうまく行かなければ、軌道修正すると言うやり方だった。このやり方は、JR社内においては必ずしも評価されず、我々の仕事の進め方に対して、かなり厳しい改善要望が出された。目標に至る道筋を目に見える形で明確に示すこと、その道筋がJRの全メンバーに理解納得できるように、絵に描いて説明されるべきであるというものだった。つまり、計画主導的且つ帰納法的手法で進めるべきとの要望だった。
これを受けてプロジェクトメンバー全員、平成4年8月の盆休みを返上して玉野に集結。2泊3日の集合研修において、プロジェクト計画の進め方を固め、全員の共通認識を作り上げることができた。1ヵ月後、私はこれら計画を纏め上げ、JRメンバーの前でプレゼンテーションを行った。この内容は、JR関係者はもとより東急車輛メンバーにも理解と納得を得るのに十分な内容であった。この説明会を境に、MESプロジェクトメンバーの評価も急速に回復することが出来た。
JRは、モノづくりのことについては素人であったとは言いながら、JR流の仕事の進め方は、今回のような新規プロジェクトでは当然の進め方であったと思うし、逆にMESの考えの方が甘かったと反省したのだった。その後、基本計画に従った仕事を進め、溶接その他種々の実験データ等による理論構築を行いながら、真剣に真面目に取り組んだ。製造技術、品質管理、物流システムなど、東急車輛を交えた3社体制の下、お互いが切磋琢磨し合いながら進めた結果、3社の信頼と友好関係は揺るぎないものとなった。

次に、車両製造の基本コンセプトの考え方について紹介する。
JR東日本の経営戦略は、製造業を保有することによる技術サービス産業への展開、経営資源(土地・建物・人材)の有効活用だった。この経営戦略を実現するために、東日本管内に8箇所ある車両検修工場の内の一つを製造工場に転換、近代的な生産ラインを作り上げることにより、1日1両(当面は年間200両)の通勤型車両の生産を目指すこととなった。これを実現する工場の基本コンセプトは、以下のような考え方に基づくものだった。
①構体と台車の素材から完成までの一貫生産 ⇔ JRの技術レベルを高めるために、明らかに自社で出来ない物以外の全てを内製化すること。
②1日1両の完成を目標とした効率よいライン配置 ⇔ 製造コストを抑えるために、投入資源に対するアウトプットを最大とすること。
③加工、組立及び台車製造工程における自動化及び省人化の導入と内製化率向上 ⇔ 従来のメーカで必要とされた工数より少ない工数で製造できること。
④構体及び艤装工程における流れ作業(タクト)化と省人化 ⇔ 無駄な動きを排した合理的で効率的な製造方式を採用すること。
⑤CAD/CAMシステムの導入と加工ラインにおけるCAD/CAMリンケージ ⇔ コンピュータ技術を最大限活用して最高効率を達成すること。
⑥生産情報システムの構築による生産効率向上 ⇔ 人、物、設備の一元的管理を達成し、ジャストインタイムが可能な生産情報を提供できること。(続く)

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