2012年6月21日木曜日

「宇野情話 洲巻長兵衛」の紹介を終えて

6月21日

宇野に残る恐ろしい伝説「簀巻きの長兵衛」の物語を小説風に書かれたものを9回に分けて紹介してきたが、如何だっただろうか?
(9回で終わったのは、苦界に投げ込まれたからではない。)

面白いと言えば面白い物語ではある。しかし、正直小説としての価値には疑問があったし、歴史書としての値打ちは全くない。ただ、この本が昭和10年に書かれた未発表の小説というところに値打ちがあると思うし、恋愛に対する人間の感情というのは、いつの時代も変わらないということがよく分かるという点で価値を感じることができる。
又、宇野の若い衆が色男の長兵衛を嬲り殺し、簀巻きにして獺越の浜に投げ捨てるという残忍な行為に至った経緯も、この筋立てだけではなかなか納得がいかない。彼らが単に悋気だけでこのような一方的な狼藉に及ぶという、単純過ぎる集団だったとは俄かには信じがたい。長兵衛自身にも何らかの落ち度があったとういうのが、人間心理としては正しいような気がする。
それと、長兵衛が浜に放り出された後、宇野の村人が訳の分からぬ奇病に倒れ、それが長兵衛の祟りであろうと恐れた村人たちは、長兵衛の霊を鎮めるためにお地蔵様を作っただけでなく、毎年7月23日に長兵衛の霊を慰めた。その後、今に至るまで連綿と盆踊りが続けられている。そのような後日談もこの小説には書かれてないという点で、やや物足らなさが感じられる。
ただ、間に描かれた挿絵は、当時の姿や風景がうまく描かれ、中々秀逸な絵である。

今回、ここに紹介したのは、このような小説を書いた人が宇野に居たということを紹介したかったからであり、宇野の伝説とその後の対応が今も続いていることの原点を知ってもらいたいと思ったからである。
今があるのは、それを生じさせた歴史と謂れがあるということだ。

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